パラオの○○事情:トリビア(パラオ豆知識)#13

*図はイメージです。

Alii! こんにちは!朝は布団から出られず、日中は人肌恋しい季節になってきました。ご無沙汰のパラオトリビアのお時間です。さてみなさん、この夏はどこかお出かけはされましたか?普段の日常生活に欠かせなくなっているスマホですが、旅行の際にも一番役立つツールではないでしょうか。動画共有サイトで話題の「恋ダンス」を見るのも一つですが、様々な動画を見て現地に渡航する前にリサーチをすることも可能ですよね。また、旅の途中に「カシャ」っと素敵な写真を撮ってSNSにリアルタイムで載せたり、地図アプリで現在地や行き先を調べたりとスマホは快適な旅の必須アイテムともいえます!そこで今日は誰もが気になるパラオのインターネット事情についてお話しします!

早速ですが、ずばり、パラオでネットはあてにしない方がいいです・・・。繋がらない状況が多々あります。楽園パラオではそれは良いとも言えますがね。なぜ繋がりにくいかというと、パラオは海底ケーブルでは無く、衛星回線での通信を行っているからなのです。また、回線が少ないため、アクセスが集中してスピードが遅くなったり中断されたりしてしまうのです。衛星ということは天気にも左右されます。厚い雲や悪天候の時は・・・アウト!ちなみにパラオのネット環境を支える衛星はO3b Networks, Ltd.によって運営されており、2014年10月のパラオに於いてのサービス開始より容量(スループット)増加を何度か行っております。またそれ以前は静止衛星(GEO)の通信サービスを使用していたため、O3b の衛星より地球から遠い軌道を回っていることから通信がより不安定でした。2016年現在のパラオでのインターネット普及率は約30~35%と言われています。近年は観光客が増加し、また住民のインターネット需要も上がっていることからインターネットの供給が追い付かなくなっているんですね。パラオ旅行に行かれて、インターネット事情に悩まされる方も少なくないと思います。特にビジネスの方たちはキツイですよね・・・。

ネット環境が悪いことにショックを受けてるそこのあなた!安心してください、新サービスがありますよ。パラオとグアムをつなぐ“海底光ケーブル”が、来年2017年の11月頃に満を持して完成いたします(予定)!ADB(アジア開発銀行)からNorth Pacific Regional Connectivity Investment Projectへの約2500万ドル(USD)の融資により実現する国家プロジェクトです。またこのプロジェクトのために既存のPNCC (Palau National Communications Corporation/パラオ国立通信公社)とは別に専門公社のBSCC (Belau Submarine Cable Corporation/パラオ海底ケーブル公社)が設立されました(Belauはパラオ語でパラオを指します)。ちなみに海底ケーブルとは、海底に作られる通信用のケーブルのことです。衛星通信から海底ケーブルによる光通信に切り替えることで帯域幅(いわゆる通信容量)と速度が増し、スムーズにネットにアクセスができるようになると予想されます。この海底ケーブルはインドネシアとフィリピンからパラオ、グアム、ハワイを通りカリフォルニアまでつながるSEA-USプロジェクトの一部になります(SEA-USはSoutheast Asia-United States の略でありNECがシステムや設備のサプライヤーです)。海底ケーブルの地図を見ると一目瞭然ですが、グアムは南太平洋地域の海底ケーブルのハブになってます。また、パラオ国内の準備もちゃくちゃくと進んでおり、大統領府の発表によると予定通り進行中です。アルモノグイ州の接続ステーションの建設はもちろん、接続ステーションからアイライ州のPNCC本社設備への接続、インフラ設備の更新、そしてコロール中心街やバベルダオブ島各州へのライン確保が現在行われております。その他離島へのケーブル・ライン整備はこれからとなります。

ただこの海底ケーブルを通すにあたり、環境面において最大の難関がありました。それはパラオを取り囲む美しいサンゴ礁が破壊されるのでは!ということ。海底ケーブルはその名の通り、海底に敷くケーブルなのでサンゴ礁を傷つけてしまう可能性があります。また、パラオとグアムの間には世界一深いことで有名なマリアナ海溝という幅69km以上にもなる溝が長さ約2250kmに及び続いています。そしてマリアナ海溝の中にチャレンジャー海淵という世界最深点があるのです!この深度を測るのも一苦労で実際計測値が正しいかはわかりません。しかし、2010年にNOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration/アメリカ海洋大気庁)とUNH(University of New Hampshire/ニューハンプシャー大学)の共同研究センター(The Center for Coastal and Ocean Mapping/Joint Hydrographic Center (CCOM/JHC))が行った最新の研究ではソナーを用いて深度を測った結果水深約10,994m・・・深すぎです。エベレストがすっぽり入ります。ということはここにケーブルを通す工事を行うのは非常に難しいです。そこで打開策として挙がったのは・・・そう、迂回です。サンゴ礁もマリアナ海溝をも避ける最適ルートが見つかりました!本当に、地球ってよく作られていますね。ちなみにこの海底ケーブル、バベルダオブ島の西側に位置するアルモノグイ州の接続ステーションからパラオの北西リーフの間を通ってグアムへと弧を描いて繋がっています。気になる方は航空写真でぜひ確認してみてくださいね~!

さて、2017年に完成が見込まれる海底ケーブルには多くの期待が寄せられています。政府としてはもちろん、安定して通信インフラによりパラオ国内におけるビジネスにも好都合になると思われることから特に経済的好影響が期待されます!光ファイバーケーブルがパラオに繋がることで、暮らしが便利になるでしょう。また、観光促進に加え、新たに皆さんによる現地からの情報発信、共有が重要になってきます。SNS、動画サイト、ブログなどその方法は多種多様。そう、今パラオへの旅行を考えているそこのあなたがパラオの観光大使になるのです!もちろん、高速インターネットは便利だけど今このご時世、世界中どこいってもネット環境が整備されていて、離れたいという方にはちょっとバッド・ニュースですかね・・・。なにせパラオはネットが遅いことがデメリットでもありましたが、その分ネットから離れてのんびりできるというメリットもありますからね(4時間ちょっとで行ける楽園)。

インターネットにおいては何かと不便といわれるパラオですが、来年この海底ケーブルがつながれば、国民も旅行者ももっと快適な生活や時を過ごせるかもしれませんね。皆様の来島をぜひぜひ、お待ちしておりま~~す!それではまた次回! Mechikung!

画像出典:アジア開発銀行/ADB